初のアフリカ系副大統領が登場したコロンビアでアフリカ系の抵抗の歴史と感性を描く音楽映画企画がスタート

2022/7/26(Tue)
Video No.: 
9
20分


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☆学生字幕翻訳コンテスト2023の授賞作品です。課題は前半のみでしたが、山口さんのご厚意でセグメントの最後まで字幕をつけていただきました。

コロンビアでは、2022年6月の選挙で元左派ゲリラのグスタボ・ペドロが当選し、何世紀も続いてきた右派の保守的政治に終止符がうたれました。副大統領になるのはアフリカ系コロンビア人の著名な環境活動家フランシア・マルケスです。彼女は南西部ラトーマ地区で多国籍企業による違法な金採掘から先祖代々の土地を守るために立ち上がり、女性たちを率いて命がけで闘い、2018年にゴールドマン環境賞を受賞しています。これまで左派の政治家や環境活動家が次々と抹殺されてきた国では、画期的な事件です。彼らに投票したのは、アフリカ系や先住民系、地方の貧農などコロンビア社会の底辺で見捨てられてきた人々です。コロンビアの伝統音楽と自然の結びつき、底辺の人々の抵抗の歴史を、新作の音楽映像プロジェクトを通じて考察します。

コロンビアの有名バンド「ボンバ・エステレオ」が始めた新しい映画プロジェクト「エル・デュエンデ(精霊の力)」は、コロンビアの太平洋岸地域を移動しながら音楽活動を行うアフリカ系コロンビア人の3人兄弟のバンド(ディナスティア・トレス)が主役です。彼らはマリンバと太鼓を演奏しますが、何世紀にもわたるアフリカの伝統を口伝で受け継いでいます。この音楽の背景にある物語、どこから、だれによって持ち込まれたのかを、映像やインタビューや電子音楽とのリミックスによって伝えています。

ボンバ・エステレオはカリブ沿岸の民族音楽に触発されて結成されたバンドで、クンビアと電子音楽の融合させる試みなどでグラミー賞を受賞しています。クンビアはカリブ海岸の民衆音楽で、アフリカから連れてこられた黒人奴隷たちが、先住民たちと一緒に楽器を演奏し始めたことから誕生しました。ボンバ・エステオの創設者シモン・メヒアは、この地に暮らす黒人や先住民のコミュニティに多くを負っていると考え、この音楽が生まれた背景を世界に伝える義務を感じていると述べます。それはコロンビア人にとってさえ、忘れられた歴史なのです。コロンビアの民衆音楽は地域によって大きく異なっていますが、それぞれの土地の自然から生まれた楽器のサウンドは、自然が楽器を通して語りかけるようなもので、コロンビアの豊かで多様な自然を体現しているメヒアは言います。彼は別の作品で熱帯雨林を守る大規模な自然保護活動についても取り上げており、自然との共生を重視する姿勢は一貫しています。(中野真紀子)

*シモン・メヒア(Simón Mejía) グラミー賞を受賞したバンド「ボンバ・エステレオ」の創設者。コロンビアの民衆音楽と音楽的伝統を称えマリンバの歴史を辿る新たな音楽映画を企画

Credits: 

字幕翻訳:山口 紗和(東京外国語大学 言語文化学部 言語文化学科4年 受賞時)

校正:中野真紀子