メディア改革全国会議 リストラの嵐の中でジャーナリズム、ブロードバンド、放送を考える

2011/4/8(Fri)
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27分

メディアの集中化が進み、報道分野でも大規模な人員削減が進行するなか、2011年4月にボストンでメディア改革全国会議が開催され、全米から2000人を超すメディア関係者や活動家たちが集まりました。おりしも2011年3月にAT&TのT-Mobile社買収が発表された矢先でした。(この買収に対しては司法省が独占禁止法違反で訴訟を起こしています。)さらにブロードバンド普及の立ち遅れなど、山積するメディアに関する問題を3人のゲストに聞きました。

独立メディアの重要性が言われて久しいですが、米国のケーブル大手コムキャストによるNBCユニバーサル買収やAT&TによるT-Mobile買収など、メディアの寡占化は止まりません。テレビやラジオ、新聞や雑誌から私たちが得る情報がすべて巨大企業からの情報だったとしたら?ユーザーが主体であるはずのインターネットで、いつのまにか特定のサイトへのアクセスが優先されているとしたら?私たちが本当に必要な情報はそこにはなく、自分の住んでいる地域の声が反映されることもなくなるかもしれません。公共の電波が巨大商業メディアに独占されてしまったら、民主主義は知らぬ間に生活の場から崩壊しかねません。

米国ではこうした危機感をもつ市民やメディア関係者が精力的な活動を続けています。メディア改革会議の主催者「フリー・プレス」はその代表といえるでしょう。
ネットの中立性を擁護すると公言したオバマ政権に、独立メディア関係者や活動家は大きな期待を寄せました。しかし中立性原則は、ワイヤレス市場には適用されないとFCCは裁定しました。すかさずAT&T社は業界4位のTモバイル社の買収を発表しています。司法省が反トラスト訴訟を起こし、買収計画は頓挫していますが、日本のワイヤレス市場もさほど変わりありません。「携帯電話会社が数社で競争があると政府は言う」という言葉は、日本にもあてはまるのではないでしょうか。
このセグメントで紹介されている動きに、低出力FM放送(LPFM)を認可する「地域コミュニティラジオ法」があります。米国ではテレビと共にラジオも独占が進みました。三大ネットワークが系列ラジオ局を売却したことで、巨大企業「クリアチャンネル」がラジオ局を次々と買収、全米約850 のラジオ局をもつといわれます。しかし、「地域コミュニティラジオ法」で認可を受け、放送している低出力の非営利ラジオ放送局も全米で800局 以上に上っています。

テレビもインターネットも、最低でも接続料、電気代などのコストがかかりますが、ラジオは電池があればどこにいても情報が手に入る究極のモバイルです。大震災の経験からもラジオの重要性は見直されました。しかしラジオ局が大手に独占されていたら、自分に必要な情報がすぐ手に入るとは限りません。低出力で自分の住む地域に直接届く、最も身近な情報は、最も弱い立場の人にはライフラインなのです。私たちの知る権利がないがしろにされないために、独立メディアの意義はますます重要になっています。(桜井まり子)

*クレイグ・アーロン(Craig Aaron):メディア改革推進団体フリー・プレス (Free Press)の新代表
*サーシャ・マインラス(Sascha Meinrath):民間シンクタンク「ニューアメリカ・ファウンデーション」オープン・テクノロジー・イニシアティブズの所長
*マルキア・シリル(Malkia Cyril): センター・フォー・メディア・ジャスティスの創設者で事務局長

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字幕翻訳:桜井まり子/校正:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗