ブラッド・ウィル(1970-2006) オアハカで殺されたNYインディメディア活動家に捧ぐ 前編
メキシコのオアハカ州では昨年6月14日、教員の座り込みストが大量の警官隊によって強制排除されたのをきっかけに、州知事ウリセス・ルイスの圧制に住民の怒りが爆発し、数ヶ月のうちに同知事の辞職を求める大規模な抵抗運動へと発展しました。不服従や建物占拠などで抵抗する市民たちに、政府は民兵組織を差し向けて活動家を襲撃しました。10月27日の襲撃で殺された6人の中に、米国人インディメディア活動家ブラッド・ウィルがいました。
撃たれたときにもカメラを握っていたという36歳のブラッド・ウィルは、メキシコのバリゲードの中で何を記録しようとしていたのでしょう。ニューヨークではよく知られた活動家だった彼の訃報に、多くの仲間や友人たちが集まり、故人を追悼すると同時に、彼の死を更なる弾圧手段強化の口実に使おうとするメキシコ政府に抗議しました。
「国際報道からこぼれ落ちる普通の人々の声を伝えたい」と語っていたインディメディア活動家の死が、そのように利用されるとすればなんと皮肉な話でしょう。それを防ぐのも、企業メディアが伝えない事実を報道するオルタナティブなネットワークです。デモクラシーナウは、この日の放送時間を丸ごと使ってブラッド・ウィルの活動家人生を伝えていますが、そこにこの番組の強いメッセージを感じます。
友人たちの記憶から浮かび上がるブラッド・ウィルの人物と活動は、なかなか魅力的です。ロウアー・イーストサイドのスクウォット(無断居住)運動や、コミュニティ・ガーデン、保存運動のような、環境問題への関心と共に一種の自律空間を求めるもの、また企業メディアに対抗するマイクロラジオの活動や創設時から関わったというインディペンデント・メディア・センターなどのメディア運動、インディメディアを広めようと訪れたラテンアメリカ諸国の社会から受けとめたものなど、いずれも興味深い内容です。(文:中野真紀子)
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ブラッド・ウィルに寄せられた世界各国の活動家からの弔辞の一部は、ニューヨーク市のインディメディア・センターのウェブサイトにのっています。
* ベカ・エコノモプラスBeka Economopoulos ニューヨーク市の活動家New York City activist speaking, October 28, 2006.
*ブランドン・ジョーダン Brandon Jourdan ニューヨーク市インディペンデント・メディア・センター October 28, 2006.
*ジョン・ギブラー John Gibler メキシコで活動中のNYのインディメディア・ジャーナリスト。
*ダイアン・ニアリ Dyan Neary ブラッド・ウィルの親友 インディメディア・センターの運動を広げるため、ラテンアメリカ各地を一緒に旅行した。
*レズリー・カウフマン Leslie Kauffman ブラッドの友人、ニューヨークの活動家として長年活躍。
翻訳・字幕:駒宮俊友
全体監修:中野真紀子