スタンフォード大学レイプ被害者の陳述書を1300万人が閲覧 「重大な転機」と活動家

2016/6/9(Thu)
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2017学生字幕翻訳コンテスト 課題5:「キャンパスレイプ」の受賞作です。

2015年夏にスタンフォード大学のキャンパス内で同大学の学生にレイプされた女性に対し、大学当局が公に謝罪するよう求める署名運動に6万人以上の署名が集まりました。この事件が全国ニュースになったのは、レイプ犯の水泳選手が意識のない女性に大型ごみ収納器の陰で性暴力を加えている現場を取り押さえられていたにもかかわらず、判事が言い渡した量刑がたった6カ月の禁固だったからです。

この判事が判決を言い渡す前に法廷で読み上げられた被害者の陳述書は、レイプ加害者にあてた手紙の形式を取っていました。この手紙はオンラインで公開され、1,300万回以上の閲覧を記録しました。「あなたが私から奪ったものは、私の価値、プライバシー、気力、時間、親しい付き合い、信頼、自分の声で語る力です。今日ようやく、声を取り戻しました」と、被害者がレイプ犯に直接語りかけています。

レイプ事件の多発は、スタンフォード大学に限られた問題ではありません。大学キャンパス内での性暴力を取り上げたドキュメンタリー映画『ハンティング・グラウンド』を制作したエイミー・ザイリン監督と、映画の中で証言しているカミラ・ウィリンガムに話を聞きます。彼女は2011年、意識を失っている間にハーバード大学の同級生から性暴力を受けた被害当事者です。

大きな問題は、レイプ事件を隠蔽したい大学側が被害の届け出を迷惑がり、刑事告発を妨害したり、被害者の人格を攻撃するような態度をとることです。ハーバード大学の事件では19人の法学教授が、レイプ犯として告発された学生こそが真の被害者であるという声明文を出し、映画『ハンティング・グラウンド』は事実を歪曲していると述べています。映画の反響はひどいものだったようですが、ザイリング監督は、スタンフォードの被害者の「手紙」が巻き起こした大きな反響が、米国世論の大きな転換点になると言っています。事実この放送から一年ほど経って、米国で”Me Too”ムーブメントが起こりました。まっくらに見える日本でも、案外夜明けは近いのかもしれません。(中野真紀子)

*エイミー・ザイリング(Amy Ziering):映画作家。キャンパス内の性暴力を扱ったドキュメンタリー映画『ハンティング・グラウンド』を制作。同名の書籍も共著。

*カミラ・ウィリンガム(Kamila Willingham):ハーバード・ロースクール卒業生。2011年に同級生により意識の無い状態で生暴力を受けたと証言。現在は文筆や講演で活躍。

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字幕翻訳: 風呂奈津美 慶應義塾大学経済学部経済学科1年(2017学生字幕翻訳コンテスト受賞時)
監修:中野真紀子