内部告発した米軍兵士ブラッドリー・マニングの人生は「アメリカそのもの」

2012/6/8(Fri)
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米軍によるイラク民間人爆撃ビデオや米国国務省の外交公電など大量の機密情報をウィキリークスに渡したとされ、起訴されたマニング上等兵は、拘束されて2年以上がたちますが軍事裁判は遅々として進んでいません。2012年9月に予定されていた軍事法廷は2013年2月に延期となりました。クワンティコ海兵隊基地では拷問に匹敵する処遇を受けていたことが指摘され、カンザス州フォートレブンワース陸軍刑務所に移されました。待遇は改善されたと言われていますが、罪状には「敵に利する行為」が含まれており、死刑になる可能性もあります。

マニングがウィキリークスの情報源だとされたのは、ハッカー界でも名が知られていたエイドリアン・ラモがマニングとのチャット内容をFBIに通報したからでした。ラモには、ハッカーたちから仲間への裏切り行為だと非難が集中しました。一方ウィキリークスのジュリアン・アサンジとの接触の有無については、マニングは黙秘を続けています。

デンバー・ニックスは、ブラッドリー・マニングの人生は「アメリカそのものだ」と言います。1987年生まれのマニングは、パソコンと共に育った世代です。同性愛がもはやタブーではなく権利として認められつつあった時代にゲイとして育ちました。9.11以降、国家安全保障を理由にイラク・アフガニスタン戦争に突き進んでいった米国は、膨大な情報の管理にマニングのような若者を必要としていました。情報分析官として軍でも仕事ぶりが認められていたとニックスは言います。

マニングが犯したとされる犯罪は死刑に値するのでしょうか。「敵に利する行為」という罪状ですが、敵とは誰なのか、どのように敵に利するのでしょう。ジュリアン・アサンジはエクアドル大使館から行ったスピーチの中でこう言いました。「もしマニングが訴えられた行為を本当にしたのであれば、彼は英雄だ」。(桜井まり子)

*デンバー・ニックス(Denver Nicks):ウェブサイト「デイリー・ビースト」寄稿記者。ブラッドリー・マニングに焦点を当てた Private: Bradley Manning, WikiLeaks, and the Biggest Exposure of Official Secrets in American History (『プライベート:ブラッドリー・マニング、ウィキリークス、米国史上最大の政府機密の暴露』)を刊行。

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字幕翻訳:齋藤雅子/校正・Web作成:桜井まり子