米国内の戦争: 9.11後の連邦補助金で警察が軍装備を購入

2011/12/27(Tue)
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米ノースダコタ州で2011年夏、自分の農場に迷い込んだ牛6頭の明け渡しを拒んだとして、農場主一家が逮捕 される事件が起きました。一家がライフルを向けたため、保安官が無人機の使用を国境警備局に依頼、その映像を使って機動隊が農場に突入したのです。無人機を使った初めての米国市民の逮捕と話題になりましたが、無人機は近年ますます非軍事目的での導入が進み、2015年からは商業利用 も認められます。

2001年の9.11以降、米国の警察組織に兵器のショッピング・ブームが起きたと言います。調査報道センターのジョージ・シュルツによると、爆弾探知ロボット、戦闘用ベスト、戦闘用ヘルメット、戦闘用盾、無人機に至るまで購入品目は多岐にわたります。ブームの背景には、9.11の再来に備えるためとして、国土安全保障省に創設された連邦補助金制度がありました。無人機はヘリと比べて安価であるため、いっそう普及が広まったと言われます。

米国には、文民統治の原則に立ち、国内の治安維持に軍隊を使用することを制限した1878年の民警団法(Posse Comitatus Act)があります。Posse Comitatusとは「カウンティ(郡)の権限」という意味です。しかし「憲法または制定法が認めた場合を除き」という例外規定により、実際には、その後も多くの法律で国内での軍隊使用は認められてきました。1981年、レーガン大統領は航空管制官ストの代替として軍隊を送っています。 最近では2007年度の国防権限法(年次軍事予算案NDAA)で、国内での軍隊使用が一定の条件のもとで大統領権限として認められ、民警団法は事実上無効になったと言われます。また2012年度の国防授権法では、大統領が米国市民を裁判なしで無期限に勾留することも可能になりました。

警察の軍事化と軍隊の国内使用が急ピッチで進むなか、武力行使に関する米国大統領の権限が拡大しています。(桜井まり子)

*キャサリン・クランプ(Catherine Crump) アメリカ自由人権協会(ACLU)の法務担当スタッフ。
*ジョージ・シュルツ(George Schulz) 調査報道センターで国土安全保障プロジェクトを担当。

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字幕翻訳:桜井まり子/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗