オバマ大統領のリビア攻撃は合法か?

2011/6/16(Thu)
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23分

米国の大統領は、米軍の最高司令官です。戦争を遂行する指揮権は大統領のものですが、宣戦布告は議会の権限です。しかし、この憲法上の規定も、迅速な決断を必要とする近代戦争では実情にあわなくなっており、議会による宣戦布告を待たずに大統領が軍事行動を開始することが慣例になっています。でもベトナム戦争では、なし崩し的に戦争が拡大していきました。その反省から1973年に、大統領の指揮権に制約を加える「戦争権限法」ができました。開戦の前に議会に説明する努力を払うこと、事後48時間以内に議会に報告する義務、60日以内に議会から承認を取り付ける必要などを定めています。

今年6月、米国下院で超党派の議員10人がオバマ大統領を戦争権限法違反で提訴しました。リビアへの介入が議会の承認のないまま60日を過ぎたからです。米政府はこれに対し長文の報告書を作成し、リビア介入は戦争権限法のいう戦争にはあたらないと弁明しました。「リビアでは敵との交戦も、恒常的な戦闘もなく」、「地上軍も展開していない」からです。リビアでの軍事行動の合法性をめぐって、提訴に加わったオハイオ州選出の民主党デニス・クシニッチ下院議員と、レーガン政権で法務官として活動し、戦争権限法に批判的なロバート・ターナー氏の論争をお届けします。

ターナーの主張は、グロチウスなどによる国際法的な解釈によれば、宣戦布告を必要とする「戦争」とは侵略戦争のことであり、国連安保理の決議に基づいて行われる平和維持のための軍隊派遣は戦争にはあたらない。じっさい、1945年の国連憲章発効以来、宣戦布告した国はないので、開戦権を議会の専権だとする合衆国憲法1条8項そのものが時代遅れであるというものです。

それに対しクシニッチ議員は、「もし他国が米国の領空に2000機を飛ばし、その中の数機が我々に爆弾を落とすことを目的としていたとして、それを米国に対する戦闘行為でないと言えますか?」と反論します。はたしてリビアでの軍事行動は、侵略戦争ではないのでしょうか?(中野真紀子)

*デニス・クシニッチ(Dennis Kucinich)オハイオ州選出の民主党下院議員。
*ロバート・ターナー(Robert Turner)バージニア大学の国家安全保障法センターの共同創始者。レーガン政権で立法担当国務次官補を務めた。

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字幕翻訳:玉川千恵子/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗