エコロジー運動の哲学詩人デリック・ジェンセン

2010/11/26(Fri)
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エコロジー運動の哲学詩人、デリック・ジェンセン――物静かな語り口とは裏腹に、その言葉は時に美しく、時に鋭く、読む者・聴く者に突き刺さります。カリフォルニア北部で持続可能な暮らしを続けるトロワ・インディアンの土地で暮らす彼は、「持続可能な技術水準はひとつしかないんだよ。石器時代だ」と言う彼の心を揺さぶった友人の言葉を伝えてくれます。ジェンセンには「文明」には、暴力と破壊が付きものだと言う認識があり、すでに「終末」が始まっているという危機感があります。だから、彼自身も含めた環境保護主義者たちの敗北の連続がはがゆいし、生ぬるい環境運動家が許せない。

「地球温暖化の解決策とされるものの大半に問題を感じるのは、産業資本主義を当然とし、地球を産業資本主義に順応させようとすることです」と、ジェンセンは語ります。「食物は店から水は蛇口から出てくる」と信じ、その制度を必死で守ろうとする環境運動、あるいはまるで「個人の純潔」を追求するかのようにエコロジカルなライフスタイルにかまけ、政治的な抵抗を忘れた人々を、彼ははっきりと否定します。川や大地――体を張ってでも、必死に守らなければならないものがある。文字通り、必死に。だから彼は、非暴力をはじめから絶対的価値として設定する運動に、疑問を呈します。運動が、権力者が決めた規則に閉じ込められることを拒否するためです。そんな彼を「暴力を擁護する」として、たたく人も多いけれど、規則からのはみだし者として、暴力を理論ではなく現実の一部として生きることを余儀なくされた、あるいはそれを選んだ先住民や囚人は、彼の言いたいことをすんなり受け入れると言います。「反撃にはまだ早い」、「まだ、そんなに必死にならなくたって」、と言う人々に、ジェンセンは、こう答えるでしょう。「海の大型魚の9割が姿を消し、プランクトンの10倍のプラスチックが海にたまり、すべての母乳にダイオキシンが含まれている。そんな時に、地球は滅びつつあるのか、ただの重傷かを論じて、何の意味がある?」「自分が生まれた時よりも良い世界を残すには、どうすればいい?」「自問すべきは、何がほしいのか?どうすれば得られるのか?武力の行使が適切か、非暴力の抵抗が適切かは、状況に応じて判断すればいい」と。(大竹秀子)

参考リンク: 小倉利丸さんのブログ デリック・ジェンセン「行動は言葉よりも雄弁だ」(1998)

*デリック・ジェンセン(Derrick Jensen) 著述家、環境活動家。現代社会と環境破壊を批判する15冊を超える著書がある。邦訳書にジョージ・ドラファンとの共著『破壊される世界の森林―奇妙なほど戦争に似ている』(明石書店)がある。

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字幕翻訳:大竹秀子/校正全体監修:中野真紀子/Web作成:丸山紀一朗