「占領を祝うな!」トロント映画祭のテルアビブ特集に文化人らが抗議

2009/9/14(Mon)
Video No.: 
1
20分
毎年9月に開かれるトロント国際映画祭(TIFF)は、北米最大の重要な国際映画祭ですが、今年はイスラエルがらみで大荒れでした。今年から始まった「注目都市」の企画で、第1回にイスラエルの中心都市テルアビブが取り上げられたからです。多数のアーティストや作家たちが、これに反対を表明しました。「トロント宣言:占領を祝うな(No Celebration of Occupation)」という抗議文には、ジェーン・フォンダ、デービッド・バーン、ダニー・グローバー、ハリー・ベラフォンテ、ジュディス・バトラー、スラヴォイ・ジジェク、ケン・ローチら1500人以上が名を連ねています。
このタイミングでテルアビブにスポットをあてるTIFFの決定は、パレスチナ占領を続けるイスラエルの文化戦略への加担だと、彼らは批判します。ガザ地区への攻撃で国際的な評判が堕ちたイスラエルは、イメージ回復を図ってイスラエルの芸術家や俳優や作家を積極的に国外に送り出し、占領や戦争犯罪から目をそらそうとしているからです。「イスラエルのブランドリニューアル」と、抗議文の作成にかかわったナオミ・クラインは呼びます。
これに対して、映画祭という文化行事に政治を持ち込むべきではないという非難が起こりました。芸術は政治とは別の領域にあるという考え方です。しかし、そのような見方を逆手にとって、イスラエルの文化活動を占領や戦争犯罪という背景から完全に切り離して売り込むのがイスラエル外務省の戦略です。こうした宣伝活動を容認すれば、占領や住民虐待の継続につながると、クラインたちは言います。
表現の自由を妨げる検閲行為だという非難もまたしかり。文化戦略への抵抗は、巧妙に問題をすり替えるロジックとの闘いのようです。これまでは、さほど明確にパレスチナ側を支援することのなかったクラインのような人が、自らガザを訪問し、今回のような行動に出たことも、国際世論の分岐点を物語っているのかもしれません。宣言文に署名した人々の中には、バトラーやジジェクのように、なかなか興味深い名前が並んでいます。→ ここ(中野)

★ DVD 2009年度 第3巻

「パレスチナ」に収録

ナオミ・クライン Naomi Klein トロント在住のカナダ人ジャーナリスト。『ブランドなんか、いらない』、The Shock Doctrine (『ショックドクトリン』)などの著者。トロント国際映画祭のテルアビブ特集に抗議する「占領を祝うな」キャンペーンの呼びかけ人のひとり

Credits: 

字幕翻訳:桜井まり子
校正・全体監修:中野真紀子・高田絵里