アフリカ系有権者の投票を阻むあの手この手

2008/9/18(Thu)
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20分

2年間に亙る長い選挙期間を、アフリカ系の血をひく初の米国大統領となるバラク・オバマ上院議員が制しました。米国では州ごとに法律が異なるため選挙に関する規定も異なり、さらに住民票などの制度もないために、個々人が有権者として登録しなければ、選挙で投票することができません。普通の人にとって、複雑な投票制度をきちんと理解することは極めて困難です。そのため選挙制度の整備や不正投票防止の美名のもと、党派を超えて、自分に都合の悪い人に投票させまいとする動きが半ば公然と行われることになります。

アンドリュー・ハッカー教授は、有権者の確認と運転免許証や社会保険制度と結びつける一部の州の政策を、黒人など特定集団を排除する意図を持ったものだとして批判します。またかつて罪を犯した人から選挙権を奪い、権利回復を容易でなくしている各州の法律が、黒人差別の歴史の延長にあることを論じています。インタビューの後半では、各地で進むアファーマティブ・アクション(積極的優遇処置)への攻撃や、所謂ブラッドリー効果(白人と黒人の候補者が争う選挙で、世論調査と投票結果を比べると、前者よりも後者で白人候補が有利になりがちな現象)を論じます。

今回の選挙戦終盤にはオバマ候補暗殺計画も摘発され、また終了後は人種的少数派に対する暴力や脅迫事件が急増していることも報道されています。初のアフリカ系大統領誕生を目前にしても、米国における人種の壁には、まだまだ越えがたいものがあるようです。金融問題に端を発する不況の中で、むしろこれから壁は高くなっていくのかも知れません。(斉木)

アンドリュー・ハッカー(Andrew Hacker) ニューヨーク市のクイーンズ大学政治学教授。ベストセラーになった『アメリカの二つの国民 断絶する黒人と白人』(明石書店)の著者。1965年以来、「ニューヨーク・ブック・オブ・レビュー」にも度々記事を発表しており、最新の記事はObama: The Price of Being Black「オバマ 黒人であることの代償」。

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字幕翻訳:大竹秀子/校正;斉木裕明
全体監修:中野真紀子