FCCが公共電波の大量競売へ

2007/8/2(Thu)
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10分

2007年8月始め米連邦通信委員会(FCC)は公共電波の競売に関する一連の規則を承認しました。これにより、FCCは無線ネット接続や携帯電話に利用できる周波数帯の使用権を入札によって売却することになります。マードックによるダウ・ジョーンズ社買収のニュースに隠れて注目されることはありませんでしたが、この決定は米国内でインターネットや携帯電話を利用するすべての人々に影響を及ぼす可能性があると考えられています。この決定がどのような意味を持つのか、2人のゲストを招いてお聞きします。

「フリープレス」のクレイグ・アーロンは、TV局が返却する700MHz周波帯域の競争入札によってFCCはブロードバンドの恩恵を社会に広げる歴史的なチャンスを潰したと指摘します。この周波帯域は高速無線インターネット接続に使えるため、電話やケーブル事業者の独占市場に新規の参入を可能にし、真の競争を実現させるまたとない絶好の機会だった、と。具体的な事例として、ノースカロライナ州西部の山岳地帯で非営利の接続サービスを提供するNPO「マウンテンエリア情報ネットワーク」の、市民のネット接続料で地域の独立メディアを支えるというビジネスモデルが紹介されます。

結局、無線通信帯域は競売にかけられ、今年3月に競売の結果が発表されました。メディアの切り口はもっぱらグーグルVSベライゾンといったような大企業の対決が中心であり、番号持ち運び制度の導入で携帯電話の会社を切り替えることができることを以って、オープンアクセスが確保されたかのように論じられました。しかしアーロンによれば、真のオープンアクセスを保障するには、電話とケーブル事業者の独占を破る第3のサービスを可能にし、競争をつくりだすことが必要です。

メディア政策の決定には多大な金銭が絡みます。米国では、ダウ・ジョーンズ買収の件も、帯域競売の件も、結局は数人のFCC委員の投票で決定されてしまいました。それでも今回は、周波数帯の競売というとても技術的な問題にもかかわらず、25万人の国民がFCCに陳情したそうです。国民の関心は強く、問題意識が高まっているのですが、政府は別の方向を向いています。大手企業ばかりを優遇するブッシュ政権の下で、米国のブロードバンド普及率はどんどん世界におくれています。(中野)

★ DVD 2008年度 第3巻 「メディアの現在」に収録

* ウォリー・ボウエン(Wally Bowen)低出力FM放送局WPVMの創始者。NPOマウンテンエリア情報ネットワークの理事。同団体はノースカロライナ州アッシュビルに本部をおき、同州西部でインターネット接続事業を行っている
* クレイグ・アーロン(Craig Aaron)メディア改革推進団体「フリープレス」の広報部長

Credits: 

字幕翻訳:有賀玲子 / 全体監修:中野真紀子