グレッグ・パラスト 連邦検事解任の裏に巨大な投票妨害工作が

2007/5/14(Mon)
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2007年5月14日、アルベルト・ゴンザレス司法長官は8人の連邦検事の解任を要求しました。この解任の不当性をめぐって、同長官が議会証言を求められるなど疑惑がたかまっています。解任の本当の目的はなんだったのか? 調査報道記者グレッグ・パラストが、解任要求の裏には共和党の大がかりな選挙不正があったとしています。

昨年ブッシュ政権が解任を検討した連邦検事12人のうち、5人は不正投票の起訴が不十分だったというのが理由でした。彼らの管轄地域は、カール・ローブ大統領顧問などブッシュ政権の高官によって不正投票の温床だと指摘されていた地域でした。カンサスシティ、ミルウォーキー、ニューメキシコ、ネバダ、ワシントン州の5箇所です。この5人のうち、4人が解任されました。

解任された4人のうちもっとも有名なのはニューメキシコの連邦検事デイビッド・イグレシアスでしょう。映画『ア・フュー・グッドメン』で、トム・クルーズが演じた、真実を求めて軍高官に立ち向かう若い法務官のモデルになった人物です。彼の解任をめぐって、共和党の投票妨害工作の存在が暴かれていきます。不正投票の横行をでっちあげ、住民のパニックをあおって投票に身分証明の提示を義務づけ、それによって多数の人々(とくに黒人やヒスパニック)を投票から排除しようとするからくりに、イグレシアスは加担させられたのでした。

不正投票疑惑をでっちあげるため無実の投票者を起訴せよと強要されたイグレシアス検事は、それを拒んだために解任されました。

一方、解任された検事と交代してアーカンソーの連邦検事に任命されたのが、カール・ローブの右腕ティム・グリフィンです。パラスト記者は、このティム・グリフィンが指揮していた大規模な選挙妨害工作を発見しました。ローブ大統領顧問らが「紛失した」と主張する内部メールのうち500通を偶然入手したためです。

黒人を中心に300万人以上から投票権を剥奪した組織的な妨害は、指揮した当人が連邦検事に任命されるという巨大な不正の構造をもっている、とパラストは主張します。

パラスト記者は2000年の米大統領選挙でブッシュ陣営がフロリダの黒人票を組織的に無効化した手口を暴いて以来、2004年、2008年と選挙にまつわる不正を次々と暴いてきた。「世界一のデモクラシー」を標榜するアメリカの驚くべき選挙不正の実態をご覧ください。(中野)

関連リンク:

選挙についてのパラストの記事は、「暗いニュースリンク」のサイトに全訳がのっています。

「消えていく投票」by グレッグ・パラスト
「腐り果てた選挙」byグレッグ・パラスト

*グレッグ・パラスト(Greg Palast)企業の不正や恐喝行為の調査からジャーナリズムの世界に転じ、選挙不正、対テロ戦争、グローバリゼーションなどの問題を追及し続ける、米国で最も気骨のあるジャーナリストのひとり。米国のメディアには煙たがられ、英国のBBC放送とオブザーバー紙を発表の舞台としており、米国ではデモクラシー・ナウ!が発信の場となっている。『金で買えるアメリカ民主主義』(2002年)はベストセラーとなった。新著はArmed Madhouse: From Baghdad to New Orleans - Sordid Secrets & Strange Tales of a White House Gone Wild(『武装したマッドハウス バグダッドからニューオリンズへ-狂乱したホワイトハウスの汚い秘密と奇談』)

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字幕翻訳:永井愛弓/全体監修:中野真紀子